2007-12-06(Thu): 愛媛大学広報シンポジウムで講演とディスカッション
愛媛大学広報シンポジウム「いま、愛媛大学の広報を考える」で、「大学の広報と学術研究情報−大学ウェブ広報における「研究」の位置」と題して講演とディスカッション。
・「大学の広報と学術研究情報−大学ウェブ広報における「研究」の位置」【PPT】
http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/doc/ehime_univ(20071206).ppt
・愛媛大学
http://www.ehime-u.ac.jp/
構成としては、まず最初に愛媛大学副学長の亀井崇さんが挨拶、次いで現在、広報推進室長についている赤間道夫さんに紹介いただきながら、『カレッジマネジメント』編集長の小林浩さん(リクルート)が「大学のブランド力−受験生になにを伝えるか」と題して講演。次いで自分が話し、その後参加者の質疑を受けてのディスカッションとなった。
・「カレッジマネジメント」
http://www.recruit.jp/service/serviceitems/collegem
http://shingakunet.com/info/57.html
亀井さんが最初に同業者を招いてのセミナーは内輪の論理に陥ってしまう可能性があり、外部からの問題提起を受けることの意味にふれられたのが印象的だった。
小林さんは、さすがリクルートの方と思うような巧みな話し方だった。実はこの機会をいただいた際に、もうお一人の講演者がリクルートの方、それも『カレッジマネジメント』編集長、とうかがっていくぶん緊張した。リクルートの方とは仕事上も接することが多いのだが、話し方がよくトレーニングされている。特にポジションが上になればなるほど、口頭でのコミュニケーション力が高い。この能力の高さがなくしては、一定以上の地位まで到達できないとも聞く。この話す力というものは、営業トークといった次元の話ではない。個人や組織の考え方を伝え、理解を得て、可能な限り共感・共有を引き出す力だ。そういう意味ではプレゼンテーションの技術でも説得の技術とも違う。そういう力を持つことが尊ばれる組織の気風を実感した。
蛇足だが、話す力の上にあるのが聞く力だとも思う。仕事上でつきあいがある方で経沢香保子さん(トレンダーズ株式会社)や粟飯原理咲さん(アイランド株式会社)という企業経営者がいる。
・「人生を味わい尽くす」ブログ(経沢香保子さん)
http://ameblo.jp/trenders/
・トレンダーズ株式会社
http://www.trenders.co.jp/
・毎日の暮らしに、小さな幸せを。(粟飯原理咲さん)
http://www.cafeblo.com/risaa/
・おとりよせネット
http://www.otoriyose.net/
・アイランド株式会社
http://www.ai-land.co.jp/
このお二人、もちろん話す力も相当なものだが、それ以上に人の話への耳の傾け方に感心する。ちなみにお二人とも元リクルート。
閑話休題。小林さんの話だが、リクルートが実施した調査結果に基づきつつ、概念の説明や具体的な指摘を織り交ぜた話は非常に勉強になった。以下、参考までに私のメモを載せておこう。なお、正確性は無保証なので以下の内容をそのまま小林さんの講演内容と思わないでほしい。
「大学のブランド力−受験生になにを伝えるか」
- 大学を取り巻く環境
- 学生数の減少と大学の増加の反比例関係
- 大学間の募集格差の拡大(私大は上位20校に集中)
- 選抜方法の二極化(偏差値選抜と非教科型選抜)
- 募集力の厳選としての大学ブランド(好循環・悪循環ブランド)
- ブランドとは何か
- ブランド≠単なるシンボルマークやキャッチフレーズ
- ブランド=顧客が頭の中に連想する価値や世界観の総和(イメージ)
- 大学の好循環経営とは
- 学内・学外コミュニケーション
- 学内への浸透・共感:学外への浸透・共感
- インナーコミュニケーション(見えない価値)の重要性
- 同時にステークホルダーの優先順位づけ
- 受験という意味においては、高校教員と保護者が重要
- 募集ブランド力調査2007
小林さんの講演後の休憩中に愛媛大学学長の小松正幸さんに挨拶。小松さんは、
・「学長日記、学長ブログ(2)」(編集日誌、2007-12-02)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20071203/1196614148
で書いたように、国立大学の学長としては初めてブログに取り組んだ方である。
・無為自然 blog
http://stuwebmin.stu.ehime-u.ac.jp/blog/
・「愛媛大学、学長ブログ「無為自然Blog」を公開」(新着・新発見リソース、2005-11-28)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20051128/1133108776
わずかな時間ではあったが、お目にかかれてよかった。
さて、自分の講演についてはレジュメを参照してほしい。趣旨としては、
・「ゴメス・コンサルティング、「2007年8月大学サイトランキング」を発表」(新着・新発見リソース、2007-09-09 )
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070909/1189268499
で記したことを敷衍している。端的にいえば、大学サイトランキングや
・株式会社地域科学研究会高等教育情報センター
http://www.chiikikagaku-k.co.jp/kkjhp/kkj.htm
・株式会社アートスタッフ
http://www.artstaff.co.jp/
が運営する大学のウェブ広報セミナーが生み出している大学ウェブ広報ブームにただ左右されるてはいけない、というのがメッセージの一つ。そして、大学の本質として「教育」とともに両輪をなす「研究」を、特にその担い手である研究者個人の力を生かしつつ、研究の「成果」だけでなく、「過程」も含めて発信することを考えるべきだ、というのがもう一つのメッセージ。
なお、紹介したサイトは以下の通り。
・AkamacHomePage(赤間道夫さん)
http://www.cpm.ll.ehime-u.ac.jp/AkamacHomePage/Akamacj.html
・統計リンク集(佐藤智秋さん)
http://cpmserv.cpm.ehime-u.ac.jp/sato/link/
・KIU教員ブログ(九州国際大学)
http://www.kiu.ac.jp/MTfaculty/
・信州大学人文学部教員BLOG(信州大学)
http://fan.shinshu-u.ac.jp/kyouin/
・「教員BLOGは成功するか」(編集日誌、2006-04-14)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20060417/1145205291
・「続・教員ブログ」(編集日誌、2006-04-26)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20060503/1146660870
・関西学院大学21世紀COEプログラム「『人類の幸福に資する社会調査』の研究」
http://coe.kgu-jp.com/
・関西学院大学21世紀COEプログラムメールマガジン
http://blog.mag2.com/m/log/0000178057/
・T lounge blog:東京大学工学部広報室
http://d.hatena.ne.jp/ut-tlounge/
・カソウケン(家庭科学総合研究所)
http://www.kasoken.com/
2人の講演を受けてディスカッションとなった。
冒頭に小林さんがリクルートがでがけた国際基督教大学(ICU)のプロモーション事例を紹介してくださった。国際基督教大学(ICU)は2008年4月に学科制度の廃止を中心とした大規模な制度変更を行う。
・国際基督教大学(ICU) - 2008年4月教学改革を実施します
http://subsite.icu.ac.jp/oar/
この制度改革のプロモーションをリクルートが担っており、以下のような取り組みを実施したという。
・リクルート進学ネット - 国際基督教大学(ICU) - 世界が欲しい人間力。
http://shingakunet.com/special/10027101/0258/
・リクルート進学ネット - 国際基督教大学(ICU) - あなたをもっとリベラルにします
http://shingakunet.com/special/10052001/0258/
・国際基督教大学(ICU) - Make yourself free! あなたにとってICUとは?
http://subsite.icu.ac.jp/prc/message/
・国際基督教大学(ICU) - ICUの交通広告(駅貼りポスター)を掲出中
http://www.icu.ac.jp/news/2007/070409.html
・国際基督教大学(ICU) - 武蔵境駅(JR中央線)ホームに電飾看板を設置
http://www.icu.ac.jp/news/2007/070701.html
・ICU Webcampus
http://subsite.icu.ac.jp/prc/webcampus/
国際基督教大学(ICU)の改革の方向性についての考えは以前述べているが、
・「国際基督教大学(ICU)の制度改革に思う」(編集日誌、2007-10-18)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20071022/1193008325
プロモーション事例として非常に興味深かった。
さて、ディスカッションでは様々な質問をいただいたが、いくつか補っておきたい。
東京大学のような有力国立大学とは異なる地方国立大学が人事面でどのような対応をとれるのかという話が出たが、やはり国立大学法人としての特性を生かし、雇用を弾力化することが欠かせないと思う。これは教員に限らず、職員についてもいえる。実質的な職員を特任準教授という形で雇用する東京大学の手法は実にうまい。
雇用には必ず資金が必要だが、地方国立大学ではその予算を学内では捻出しにくく、外部資金に頼らざるを得ないようだ。この実態については詳しくないので、いまはこれ以上踏み込めない。だが、学内での合意を形成を経たうえで、重点化すべき部門の雇用を学内の予算で確保できるようにならないだろうか。もちろん、どこの大学であっても、その困難さは十分に察せられるが……。
中四国地域といった地域的な枠組みで横断的なネットワークをまとめあげる話も出た。これについては顰蹙を買うことを承知であくまで特定分野でのトップリーグを目指すのか、それともたとえば、四国アイランドリーグのような上部リーグへの人材供給を前提とする補助的組織を目指すのか、議論の余地があると思う。
以上、手許のメモを元にしつつ。
ここ数年、図書館関係のことを考える機会が多かった。それだけに、今回のシンポジウムは自分自身の立ち位置を見つめ直し、今後の方向性を考える意味でも非常に貴重な機会となった。赤間道夫さんをはじめ、すばらしい機会を与えてくださった愛媛大学の皆さまに感謝したい。