2008-01-11(Fri): 無断引用は存在せず、それは盗用に過ぎない

当該部分を担当した産総研研究員が同技術部報告から無断引用したことが判明しました。

・「産総研出版物における他文書の不適切な引用について」(産業技術総合研究所、2008-01-11)
http://www.aist.go.jp/aist_j/announce/au2008/au0111.html

末廣恒夫さんが折にふれて指摘しているが、無断で行う/行えるのが「引用」である。出所を示さずに他人の成果を自分の名前で発表することは、単なる盗用や剽窃に過ぎない。

・「無断引用」(Copy & Copyright Diary、2004-01-24)
http://d.hatena.ne.jp/copyright/20040124/p1
・「引用と盗用・転載」(Copy & Copyright Diary、2004-05-01)
http://d.hatena.ne.jp/copyright/20040501/p1
・「それで学術研究が成り立つのだろうか」(編集日誌、2007-02-26
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070228/1172616083

実際、産業技術総合研究所も「研究者行動規範」の中の「研究の責任ある遂行に向けて」で引用の条件を満たしていない行為は「剽窃」であると述べている。

適切な引用
他の研究者の発表結果や、未発表データあるいはアイディアを適切なプロセスを踏まず、かつ引用もせずに記述することは、暗黙に自分のオリジナルであるかのように剽窃することになり、研究ミスコンダクトに該当します。研究者は自らの行った研究のオリジナリティーを主張するばかりでなく、他の研究者のオリジナリティーも尊重しなければなりません。人は他人から聞いたり、議論の中で出てきた事柄や新しいアイディアを、時間の経過と共に自らのアイディアであったかのように誤認してしまうこともあります。アイディアは印刷物になっていないことも多く、証拠となるものが無い場合もあり得ますので、その由来を客観的に確認し、必要に応じて適切に引用するように十分注意するべきです。コンピュータープログラム、特許、遺伝子組換え体、合成試薬等の利用についても同様にオリジナリティーを尊重した厳格な運用を行なわなければなりません。

・研究者行動規範 - 研究の責任ある遂行に向けて
http://www.aist.go.jp/aist_j/information/code_of_conduct/p11_p13.html

引用の条件を満たさず盗用や剽窃といわれても仕方のない事態を引き起こした上に、自らが示した行動規範と矛盾し、引用の理解をゆがめる文章を発表するとは……。産業技術総合研究所の体制はどうなってしまっているのだろう。

産業技術総合研究所
http://www.aist.go.jp/