2008-09-01(Mon): 2009年度が待ち遠しい−国立国会図書館の新たな情報検索サービス

数日前にITProが国立国会図書館が2009年度の公開を予定しているサービスについて報道している。

国立国会図書館(東京・千代田区)は2009年度中にも新たな情報検索サービスを公開する。同図書館には全国各所にある図書館の司書から、利用者に依頼された資料を探すための問い合わせが年間6万件以上ある。問い合わせ情報をデータベース化して利用者の要望を分析し、利用者自身で欲しい情報にたどりつけるように情報の提供方法を見直す。利用者の利便性を向上させるとともに、図書館の担当者の業務を効率化したい考えだ。

・「国立国会図書館 情報の在りかを指南する仕組みを2009年度に導入、利用者が欲しい情報にたどりつく時間の短縮目指す」(ITPro、2008-08-29)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/JIREI/20080827/313565

この記事自体興味深いのだが、この記事を受けて吉川日出行さんが自身のブログでさらに興味深い発言をしている。

実はこの新サービス開発の為のアイデア提供的な調査研究を昨年度に弊社みずほ情報総研にて受託し報告書をまとめた。
この案件は「ナレッジ提供サービスのユーザインターフェース要件調査」という名前の案件で競争入札だったので国立国会図書館のホームページを見れば弊社が落札したことは判る。報告書では、はてなをはじめとしたインターネット上の先行サービスを参考に、新サービスで実現した方が良い機能をいくつも織り込んだ。

・「国立国会図書館の「テーマ別調べ方案内」や「レファレンス協同データベース」は便利」(ナレッジ!?情報共有…永遠の課題への挑戦、2008-09-01
http://blogs.itmedia.co.jp/knowledge/2008/09/post-4a86.html

これはぜひ読んでみたい。

吉川さんといえば、

サーチアーキテクチャ 「さがす」の情報科学
みずほ情報総研株式会社、吉川日出行著『サーチアーキテクチャ−「さがす」の情報科学』(ソフトバンククリエイティブ、2007年、2520円)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797341033/arg-22/

の主要な著者。この本やこれまでのブログでの発言を踏まえると、理想と現実のバランスをとった提案をされる方という印象がある。その吉川さんがアイデアを出しているとは、国立国会図書館の新システムには大いに期待できそうだ。

ところでこの種のシンクタンクが国の機関に納めた報告書は、一般に公開されるようにならないのだろうか。調査にあたって受託機関が得た対価の原資は税金であることや、調査内容が妥当であったかを後々検証する余地を残すということを考えれば、原則的に公開されていいように思う。もちろん、このような目的だけで考える必要はない。せっかくの調査結果である。結果を公開し、共有することで、市民の理解や支持も深まるように思う。

なお、吉川さんも一部ふれているが、参考までに調達情報を挙げておこう。

・公共調達の適正化について(平成18年8月25日付財計第2017号)に基づく競争入札に係る情報の公表(物品役務等)【PDF】
http://www.ndl.go.jp/ICSFiles/afieldfile/2008/04/09/19rakusatsu.pdf

によれば、みずほ情報総研株式会社はこの契約を一般競争入札で獲得している。国立国会図書館の予定金額は1556万1000円であったのに対し、最終的な契約金額は1018万5000円となっている。

ともあれ、来年度が楽しみ。2009年度は国立国会図書館以外にも国立情報学研究所(NII)がCiNiiのリニューアルを予定しており、科学技術振興機構JST)にも大きな計画があると聞いている。どのようなシステムが登場するのか、そしてどの機関がその開発・公開手法において支持を集めるのか、非常に楽しみだ。