科学技術振興機構(JST)、J-GLOBAL(科学技術総合リンクセンター)試行版(β版の)を公開(2009-03-30)

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科学技術振興機構JST)がJ-GLOBAL(科学技術総合リンクセンター)試行版(β版の)を公開した(2009-03-30)。また、同時にJ-GLOBAL(科学技術総合リンクセンター)のAPIを同機構が別途運営しているSciencePortalとJ-STORE(研究成果展開総合データベース)に提供した。

・J-GLOBAL(科学技術総合リンクセンター)
http://jglobal.jst.go.jp/
・「J-GLOBAL(科学技術総合リンクセンター)試行版(β版の)公開について」(科学技術振興機構JST)、2009-03-27)
http://www.jst.go.jp/pr/info/info625/

研究開発によく出現する情報を基本情報として登載しています。これらの基本情報同士をJSTが長年培ってきたノウハウを駆使して有機的につなぎ、異分野の知や意外な発見などを支援する新しいサービス

・科学技術総合リンクセンター(J-GLOBAL)について - J-GLOBALとは
http://jglobal.jst.go.jp/footer.php?page=aboutus

を謳い、

  1. 研究者情報 - 国内の大学・公的研究機関・研究所に所属する研究者の名前、所属機関、発表論文等
  2. 文献情報 - 内外の主要な科学技術・医学・薬学文献の書誌(標題、著者、掲載資料、巻号頁等)
  3. 特許情報 - 特許庁が作成する公開公報、公表公報、再公表公報の書誌(発明の名称、出願番号、発明者等)
  4. 研究課題情報 - 国内の様々なファンディング課題の名称、実施期間、実施研究者等
  5. 大学・研究所情報 - 国内の大学・公的研究機関・研究所の名称、所在地、代表者等
  6. 科学技術用語 - 科学技術用語の日本語名称、同義語、関連語、上位概念等
  7. 化学物質情報 - 有機化合物の日本語名称、慣用名、分子式
  8. 遺伝子情報 - ヒト遺伝子の名称、エイリアス、遺伝子座等
  9. 資料 - 国内外の主要な科学技術・医学・薬学文献のジャーナル等の資料名、略記、出版団体等

といった学術研究上の基本情報を横断して検索できる。

だが、科学技術総合リンクセンター(J-GLOBAL)の本質は、このような横断検索的な機能ではない。重要なのは、

  1. 上記の基本情報間の関係性を抽出・表示できる点
  2. これらの機能をAPIを通して外部に提供できる点

だ。基本情報間の関係性は、以下のように示される。

  1. 研究者と研究者 - 共著の関係、内容類似の関係
  2. 研究者と文献 - 著者と発表論文の関係、内容類似の関係
  3. 研究者と特許 - 発明者と出願特許の関係、内容類似の関係
  4. 研究者と研究課題 - 実施研究者と実施課題の関係、内容類似の関係
  5. 研究者と大学・研究所 - 所属研究者と所属機関の関係
  6. 文献と文献 - 内容類似の関係、引用・被引用の関係
  7. 文献と大学・研究所 - 発表論文と著者所属機関の関係
  8. 文献と特許 - 内容類似の関係
  9. 文献と研究課題 - 内容類似の関係
  10. 特許と特許 - 内容類似の関係
  11. 特許と大学・研究所 - 出願人と出願特許の関係
  12. 特許と研究課題 - 内容類似の関係
  13. 研究課題と研究課題 - 上位課題・下位課題の関係、内容類似の関係
  14. 大学・研究所と大学・研究所 - 上位組織・下位組織の関係
  15. 科学技術用語と科学技術用語 - 上位概念・下位概念の関係、関連語の関係
  16. 科学技術用語と文献 - キーワードの関係
  17. 科学技術用語と特許 - キーワードの関係
  18. 科学技術用語と研究課題 - キーワードの関係
  19. 化学物質と文献 - キーワードの関係
  20. 化学物質と特許 - キーワードの関係
  21. 化学物質と研究課題 - キーワードの関係
  22. 遺伝子と文献 - キーワードの関係
  23. 遺伝子と特許 - キーワードの関係
  24. 遺伝子と研究課題 - キーワードの関係
  25. 資料と文献 - 文献と発表資料の関係

こういった関係情報があることで、これまでインターネット上の科学情報では弱かった情報と情報の結びつき、特にリンクによる結びつきを実現できるようになる可能性がある。そして、2点目の特徴であるAPIの提供を通して、この関係情報が外部のサイトでも利用できるようになる。API提供をすでに受けている2つのサイトの実例をみるとわかりやすいだろう。

・SciencePortal - 2009年4月10日 スマートグリッドで日米専門家ワークショップ
http://scienceportal.jp/news/daily/0904/0904101.html
・J-STORE - ベッドマットレスの生体情報検出装置
http://jstore.jst.go.jp/cgi-bin/patent/advanced/detail.cgi?pat_id=19427

いずれもページの下部に「Powered by J-GLOBAL」と題されたコーナーがあり、そこには

  1. 内容類似の文献
  2. 内容類似の特許
  3. 研究内容が類似の研究者

が表示されている。表示の仕方や精度には課題があるものの、関連情報の結びつきは実感できるだろう。

現段階ではあくまでベータ版であるが、

・今後の予定
http://jglobal.jst.go.jp/footer.php?page=goal

によれば、当面ベータ版としての改善を続けた後、最終的には本格版として公開する計画がある。現在は内部向けの提供にとどまっているAPIをぜひ一日も早く一般向けに提供し、様々な活用事例を生み出していってほしい。それこそが本格版への近道でもあり、正攻法でもあるだろう。

 なお、

・J-GLOBAL開発について
http://jglobal.jst.go.jp/footer.php?page=developer

によれば、J-GLOBALの構築にあたったのは、

・株式会社RNAi
http://rnai.co.jp/
ユニアデックス株式会社
http://www.uniadex.co.jp/

の2社。受注した企業の社名をサービス上で公表することは珍しいが、本来クレジット表示を行われるべきものであるし、受注企業名も公表されてしかるべきだ。その意味で、この点においてもJ-GLOBALは良い前例となったといえる。