2009-10-09(Fri): 岡山県立図書館 図書館職員等研修講座(レファレンス研修)で講師


今日は終日、岡山県立図書館 図書館職員等研修講座(レファレンス研修)で講師。演題は「レファレンスの限界を超えて−レファレンスのアーキテクチャーを再設計する」。

・「レファレンスの限界を超えて−レファレンスのアーキテクチャーを再設計する」
http://www.slideshare.net/arg_editor/okayamalib20091009-2195791
岡山県立図書館 図書館職員等研修講座(レファレンス研修)
http://www.libnet.pref.okayama.jp/libnet/librarian/kensyu/refa/
岡山県立図書館
http://www.libnet.pref.okayama.jp/

参加者は公共図書館大学図書館学校図書館から合計40名ほど。全体的な進行・構成は以下の通り。

  • 10:00〜12:00
    • 講義
  • 12:00〜13:00
    • 昼食
  • 13:00〜14:30
    • 討論
  • 14:30〜15:00
    • 質疑・講評

講義は、第4回レファレンス協同データベース事業参加館フォーラムや図書館流通センター(TRC)によるライブラリー・アカデミーで繰り返し述べてきた現行のレファレンスの限界を指摘する内容とし、

・「第4回レファレンス協同データベース事業参加館フォーラムで講演」(編集日誌、2008-02-22)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080224/1203815540
・「第4回レファレンス協同データベース事業参加館フォーラム記録集、公開」(編集日誌、2008-07-01)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080702/1214932584
・「ライブラリー・アカデミー第5回講義−「レファレンス再考」」(編集日誌、2009-02-04)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090205/1233786588
・「第6回講義−「レファレンス再考」演習」(編集日誌、2009-02-18)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090220/1235056339

「限界を超えるレファレンスのアーキテクチャーを考える」と題した討論では、

  • レファレンスは原理的には「最後の砦」足りうると仮定し、
  • 同時に、現状では、破綻することは必至な状況にあると想定し、
  • その上で、既存の枠組みにとらわれず、発想・思考すると、どのようなサービス設計が可能だろうか

という問いを立てて行った。

討論の結果、暫定的な結論として、大きく2つの論点が明確になった。1つは、レファレンスの対象の明確化であり、もう1つはレファレンスのプレゼンス向上と言えるだろう。

以下はメモとして。

まずは1つ目の論点であるレファレンスの対象の明確化について。

  • レファレンスによるサポートを必要としない利用者や非利用者、特にインターネットを活用することで一定程度の調査を自ら行える層に対しては、限られた図書館リソースを用いてサービスを提供することを過度には求めない。
  • むしろ、自分では調査を完遂できない利用者に対するサービス提供に特化する。
  • その際、すべての利用者に対してライブラリアンが対応するのではなく、調査を一定程度は行えるが、ライブラリアンのサポートを必要とする利用者が、調査を自ら行うことがまだ難しい利用者をサポートするという利用者間の助け合いサイクルをつくる。
  • ライブラリアンはレファレンスにおいて図書館外のリソース(専門家や専門機関)を積極的に活用し、図書館やライブラリアン以上に適任な専門家や機関がある場合、それらの専門家や機関を利用者に紹介することを厭わない。
  • 外部リソースや他の利用者をサポートできる利用者をネットワーク化する構造の構築と維持をライブラリアンの主務とする。

2つ目の論点となったレファレンスのプレゼンス向上については、課題としては認識を共有できたと思うが、論じ尽くすところまでは行かなかった。自分としては、まずはレファレンス協同データベースや岡山県レファレンスデータベースに収録されている事例への検索エンジン経由でのアクセスを増やすことが重要でないかとは思う。

・レファレンス協同データベース
http://crd.ndl.go.jp/jp/public/
岡山県レファレンスデータベース
http://gyoumu-info.libnet.pref.okayama.jp/infolib/meta/MetDefault.exe?DEF_HTML=META_NML_SEARCH&DEF_XSL=&GRP_ID=G0000006&DB_ID=G0000006reference&IS_TYPE=meta&IS_STYLE=default

テクニカルな点は、

2008-02-22(Fri):
第4回レファレンス協同データベース事業参加館フォーラム
(於・京都府国立国会図書館関西館
http://crd.ndl.go.jp/jp/library/forum_4.html

で述べており、その内容は、

・「レファレンス協同データベースに期待すること−Web標準API公開、レファレンス再定義」(第4回レファレンス協同データベース事業参加館フォーラム記録集【PDF】、国立国会図書館、2008-06-30)
http://crd.ndl.go.jp/jp/library/documents/forum_h19_report.pdf

に収められているので参考にしてほしい。

・「第4回レファレンス協同データベース事業参加館フォーラムで講演」(編集日誌、2008-02-22)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080224/1203815540

レファレンスデータベースをウェブに適応したものにしていくのと同時に、データの内容を付加していくことも必要だ。その意味では、岡山県レファレンスデータベースで行われている時間情報と地理情報を付加する仕組みは素晴らしい。また、熊谷慎一郎さん(宮城県図書館)が個人的に取り組んでいるような

レファ協ほめまくり
http://d.hatena.ne.jp/nachume/

のようなレファレンスデータベースにさらに追加情報を足し上げていく試みにももっと注目したい。情報を多角的に集約し、オープンな形で利用できるようにすれば、地図やOPAC(蔵書検索)との連携が進み、気がつけば図書館が提供するレファレンス事例を見て、求める答えにたどりつく人々、特に普段図書館を利用せず、レファレンスという言葉を知らない人々に、その存在を認知していってもらえるのではないだろうか。

もう1つは、レファレンス自体をもっと広い世界で行うことだ。たとえば、笹沼崇さん(ゆうき図書館)が提案している

Yahoo知恵袋やはてな人力検索のといった質問サイトに、図書館のレファレンス窓口を開設したい

・「レファレンスサービスの転換」(Sasanuma’s work、2009-05-15)
http://d.hatena.ne.jp/t_rabi/20090515
・「レファレンスサービスの転換」(「[本]のメルマガ」357、2009-05-15)
http://back.honmaga.net/?day=20090515

は非常に有効だろう。Yahoo! JAPAN在職中、Yahoo!知恵袋の企画・設計にあたった立場としては、Yahoo!知恵袋に図書館とライブラリアンが集結するようになれば、これほど嬉しいことはない。

・朝焼けの図書館員
http://www.pot.co.jp/asayake/
・ゆうき図書館
http://www.lib-yuki.net/

さて、Yahoo!知恵袋には限らないが、Q&Aサイトでのレファレンスサービスの展開に関心のある方、特に現在のレファレンスの限界を超えていきたいと思っているライブラリアンの方々、Q&Aサイトとの連携に関心があれば、ご連絡を。これは一つの形にしていきたいと思っている。

閑話休題

ともあれ、長丁場の研修であったが、10名以上が参加してくださった最後の交流会のひとときも含めて、何よりも自分自身が勉強になった。今回の研修を企画してくださった岡山県立図書館の方々、研修に参加してくださった岡山県内の図書館の方々に感謝したい。