2009-11-02(Mon): “ツタエルコト”はどこにある!?−科学コミュニケーションと学術コミュニケーションを開催

昼からお台場へ。

・「日本科学未来館を初めて見学し、ガンダムへ、そしてサイエンスカフェにいがたでの登壇確定」(編集日誌、2009-07-30)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090731/1249040618

以来、ほぼ3ヶ月ぶりだ。夕刻から、長神風二(東北大学)さんと共に、

2009-11-02(Mon):
シンポジウム「“ツタエルコト”はどこにある!?−科学コミュニケーションと学術コミュニケーション」
(於・東京都/日本科学未来館 みらいCANホール)
http://science-in-society.blogspot.com/2009/09/blog-post.html

を開催。

・nagami@ウィキ(長神風二さん)
http://www19.atwiki.jp/nagami/

第1部の「講演」では、野家啓一さん(東北大学理事・副学長・附属図書館長)から「学術情報と市民社会(公共圏)」と題した講演、長尾真さん(国立国会図書館館長)から「学術情報・科学情報を保存・流通させるために−専門家と市民の間でできること」と題して、それぞれお話しいただく。その内容は、例によって、佐藤翔さん(筑波大学)のレポートに詳しい。

・「【研究者必見!】"ツタエルコト"はどこにある!? 科学コミュニケーションと学術コミュニケーション【研究者以外も必見!】」(かたつむりは電子図書館の夢をみるか、2009-11-02)
http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20091102/1257184329

また、今回は、先日紹介した『マガジン航』の編集長・仲俣暁生さんもいらしていた。

・「『マガジン航』創刊」(編集日誌、2009-10-23)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20091026/1256487185

同誌にも仲俣さんによるレポートが掲載されている。

・「学術コミュニケーションと本の未来」(マガジン航、2009-11-03)
http://www.dotbook.jp/magazine-k/2009/11/03/scientific_communication/

また、

・「次はどこに土足で踏み込もうか」(何もない、2009-11-04)
http://d.hatena.ne.jp/DIEtrich/20091104/p1

にも記述がある。

引き続く第2部の「提案」では、

・江渡浩一郎(産業技術総合研究所
http://www.eto.com/
・折田明子(中央大学慶應義塾大学
http://www.ako-lab.net/
・李明喜(matt)「コミュニケーションとしてのデザイン」
http://www.mattoct.jp/
・長神風二(東北大学)「学術のDemocracyへ」
http://www19.atwiki.jp/nagami/

の4氏にそれぞれ「科学コミュニケーションにおける市民参加」(江渡)、「わらしべ長者的研究ライフ」(折田)、「コミュニケーションとしてのデザイン」(李)、「学術のDemocracyへ」(長神)と題したお話をいただく。

以下はメモ。

江渡さんが幼少時の経験として語った児童館での工作経験は非常に印象的だった。突然、教わる側から教える側への転換、この両者の転換可能性、これこそが市民参加の「原型」ではないか?という問いは重い。そして、江渡さんがさらに「そのための仕組み作りを考えていきたい」と述べたことには実に感銘を受けた。

今回の登壇者の中では最もつきあいの長いのは折田さんだが、考えてみるとこうやってあらたまった場で話を聞くのは初めてかもしれない。「アタリマエを疑う」と「わらしべ長者になる」という彼女の研究者としてのポリシーにはつくづく共感する。そして、そのような結果、特に後者を実現する上で有効に働いている折田さんの情報発信&自己開示の姿勢にあらためて感心。

アゥエー感を述べていた李さんだが、自分はむしろ誰よりも「ドンピシャ」と思っていた。李さんとは、

・「トークセッション「自律進化するデータベースはつくれるか」に参加」(編集日誌、2009-02-14)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090215/1234691629

で出会ったのだが、こんなにも早く一緒に何事かをできたことが嬉しい。「デザインにおける知の構造化」「行為からデザインを捉え直す」という言葉に象徴される李さんの活動を紹介できる機会となってよかった。最近、自分でも場の設計思想のような話を方々でしているが、これは確実に李さんの影響であることをあらためて実感した次第。

長神さんの話は、そもそもこの企画を詰めるここ3ヶ月ほど一貫して聞いているのだが、軸はぶれずに、しかし常に進化し続ける男だなあ、と感嘆しつつ聞いた。数ヶ月、数週間、数日を置いて再度同じテーマで話をすると必ず"Something New"がある。一貫して考え続けるのと同時に、インタラクションの中で軌道修正を図り、より正確な方向に進んでいく姿勢を見習いたい。彼自身、

・「データ共有の時代へ そしてヒトのつながりと」(A Science Communicator’s Diary、2009-11-03)
http://www2.atword.jp/science/2009/11/03/%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E5%85%B1%E6%9C%89%E3%81%AE%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%B8%E3%80%80%E3%81%9D%E3%81%97%E3%81%A6%E3%83%92%E3%83%88%E3%81%AE%E3%81%A4%E3%81%AA%E3%81%8C%E3%82%8A%E3%81%A8/

を書いているが、あらためて彼と共同の企画を1本成し遂げられた自分の幸運に感謝。

討論では、コーディネーターとして常々思っているその場の討論の成熟を期待しないでほしい旨、そして各自が考える種や卵を持ち帰ってほしい旨を最初に話した。蛇足ではあったと思うが、前述の長神さんを見ているとつくづくそう思うのだ。ときおり「討論は煮詰まらなかった」的なコメントを見かけるが、それは単にその人が思考の種を持ち帰る努力、あるいは持ち帰った種を自分の中で育む努力を怠っただけだと思う。

討論の全体的な印象だが、自分としては図らずして、いやこの顔ぶれであれば当然の帰結かもしれないが、長尾さんが語った「多くの人の知を借りる」こと、あえて言ってしまえば「集合知」について一定の合意というか、大きくは同じ方向性の意見になったことが興味深い。もちろん、討論で出た意見はこれに限られるものではないが、いまの自分にとってはこの話題が最も触発の大きいものだった。直近では、

2009-11-10(Tue):
図書館総合展フォーラム「財政危機をチャンスに変える思考と戦略−低成長時代の図書館サービス指導理念」
(於・神奈川県/パシフィコ横浜
http://d.hatena.ne.jp/sogoten/20090930/p17

で、「オープン志向による図書館サービス改革−金太郎飴を超えて」という話をするので、それまでに自分が持ち帰ったこの種・卵を育てたいと思う。

さて、例によって、多くのサポーターの方々に助けられた。彼ら・彼女らの助けがあってこそ、休みの谷間の月曜日にも関わらず100名もの参加者を得られたことは間違いない。心から感謝したい。

そして、長神さんも書いているが、ARGフォーラムに続き司会を務めてくださった内田麻理香さんに心からお礼を申し上げたい。長神・岡本という困った男子2人が好き勝手にやるのを常に温かく受け止めてくださっている。

・カソウケン(内田麻理香さん)
http://www.kasoken.com/

しかし、この3人。年齢は一つ違うだけで、私が一浪しているので大学在学期間も一緒。もちろん、当時はお互いの存在は知らなかったわけだが、10数年の時を経て、いまこうやってツナガル縁が楽しい。