2010-03-18(Thu): 北米ツアー2日目−ニューヘイブンに日帰りし、コロンビア大学C.V.スター東アジア図書館(C. V. Starr East Asian Library, Columbia University)、イェール大学の各図書館を見学

今日は強行軍。朝からまずはニューヨーク市内にあるコロンビア大学C.V.スター東アジア図書館(C. V. Starr East Asian Library, Columbia University)へ。

昨年、

2009-11-11(Wed):
第12回図書館総合展 運営委員会主催フォーラム“グーグル文化と日本”−研究者、図書館の立場からグーグル・ブック構想を評価する
(於・神奈川県/パシフィコ横浜
http://d.hatena.ne.jp/sogoten/20090929/p20

でご一緒した和田敦彦さんの大著

・和田敦彦著『書物の日米関係−リテラシー史に向けて』(新曜社、2007年、4935円)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4788510367/arg-22/

に刺激を受けていたので、今回の北米ツアーでは可能な限り、アメリカの大学図書館を訪れることにしたのだ。

まずは、コロンビア大学C.V.スター東アジア図書館。

・C.V. Starr East Asian Library
http://www.columbia.edu/cu/lweb/indiv/eastasian/
・Columbia University Libraries
http://www.columbia.edu/cu/lweb/

予定より少し早く着いたので、学内を散策し、ピューリツァー賞で有名なジャーナリズム学部等を見て回る。

待ち合わせ時間になったので、C.V.スター東アジア図書館に野口幸生さんを訪ね、様々な説明を受けつつ、館内をご案内いただく。

個人的に建築への関心が高いので、どうしても建物や設備に関心が行きがちだが、その前にはやり感動するのは、日本のそこらの大学図書館を凌駕する日本語書籍の充実ぶりだ。これだけの蔵書が戦前から集められていたことと、他方日本では敵性言語として欧米語の書籍が排除されたことに当時における彼我の差を痛感する。一言で言えば、それは戦争に負けるわけだ。

ちなみに、東アジアとある通り、扱っている資料は日本語に限られず、韓国語、中国語の資料に加え、さらにチベット語の資料も含んでいる。CJKならぬCJKTといったところだろうか。

さて、野口さんによれば、収蔵スペースの問題で、すでに同図書館の蔵書の半分はコロンビア大学以外の他の図書館と共同で運用する外部書庫に移しているという。来週、フィラデルフィアで自分が話す話題にも関わるが、書籍が大規模にデジタル化されつつある時代において、スペースの問題をどう考えるかは、グローバルな課題であることをあらためて実感する。

さて、施設だが、このC.V.スター東アジア図書館は、かつては法学部の建物だったということで、意匠が全般的に法学部の雰囲気を感じさせる。ステンドグラスに刻まれた文字が実に象徴的。また、かまぼこ型の閲覧室には、中二階のような半個室的空間がある。今日は幸いにと言うべきか、春休みシーズンにあたるので学生・院生の利用はまばら。しかし、普段は学生・院生が群がっているそうだ。

閲覧室には、書籍だけでなく、東アジアを感じさせる美術品が随所に展示されているのだが、圧巻はシカゴ国際博覧会(シカゴ万博)の際に日本館に出展されたという神社建築が館内に置かれていること。当時、これを見たコロンビア大学の卒業生が買い求め、大学に寄贈したという。

書庫にもご案内いただいたのだが、床にガラスが覗いているところがところどころにある。さて、なんだろうと思ったら、かつてはガラス張りの床だったとのこと。後にコロンビア大学が共学化した際に、シースルーのガラスでは都合が悪いので、上に補強を行ったようだ。ちょっとしたことだが、アメリカの歴史ある私立大学が共学化する際の歴史の一こまが感じられる。そして、資料だけでなく、このような施設・設備に関するあれこれを抑えている野口さんに感動した。書を司るだけでなく、図書館全体を司っているように思える。これこそが司書のあるべき姿かもしれない。

一通り、見学を終えた後に、森本英之さんも合流して、しばし歓談。ごく限られた時間ではあったが、Kindleの可能性等、さまざまな気づきを得られたひとときだった。お二人には来週フィラデルフィアで再びお目にかかれるのだが、それでもあえてコロンビア大学を訪ねて本当に良かった。

そう言えば、館内の至るところにキツネをモチーフにしたグッズが置かれていた。

さて、昼前にコロンビア大学を辞して、次は電車でニューヘイブンのイェール大学へ。イェール大学はもっと北の方、ハーバード大学等があるボストンの近郊のイメージがあったのだが、実はニューヨーク市内から鉄道で1時間半から2時間の距離にある。実はAMTRAKが大幅に遅延して、別の鉄道に乗り換えるというアクシデントがあったのだが、それはまた別の話。とはいえ、今後イェール大学を訪れる方の参考になるかもしれないので、やはり記しておこう。ニューヨークから鉄道でイェール大学のあるニューヘイブンに行く際は、AMTRAKではなく、Metro-North New Heaven Lineがおススメ。要するに、AMTRAKは南の方から相当長距離を走ってくるので、どこかで遅れが生じると、回復しにくいのだ。Metro-North New Heaven Lineはニューヨークが始発なので、その点は安心。

ともあれ、予定から遅れつつもニューヘイブンに到着し、イェール大学へ。大学ありきで発展してきた町なので、ダウンタウンはあるものの、基本的にはやはり大学の街である。ここで中村治子さんら東アジア図書館(East Asia Library)の方々と落ち合い、東アジア図書館をはじめ、メインライブラリーであるスターリング記念図書館(Staring Memorial library)やバイネキ稀覯本図書館(Beinecke Rare Book and Manuscript Library)を見学させてもらった。

・イェール大学図書館
http://www.library.yale.edu/

イェール大学での見学は短時間ながらも多岐に渡るので、見学した図書館ごとに気づいたことを書き留めておこう。

・東アジア図書館(East Asia Library)
http://www.library.yale.edu/eastasian/

蔵書も興味深かったのだが、それ以上に関心を持ったのが、学習・研究環境の支援に力を入れていること。複数のセミナールームをアジア研究に取り組む教員・院生・学生に提供している。

スターリング記念図書館(Staring Memorial library)
http://www.library.yale.edu/rsc/sml/

なによりも中世寺院を模した建築が素晴らしい。

ところどころにある彫刻はすべて本にちなんでいる。

・バス図書館(Bass Library)
http://www.library.yale.edu/bass/

学部生向けの図書館。当然ながら学習環境の充実に力を入れており、個室が多数提供されている。同時に読書環境の充実にも力を入れているように思われた。

・音楽図書館(Irving S. Gilmore Music Library)
http://www.library.yale.edu/musiclib/muslib.htm

こちらも注目は学習環境なのだが、従来は中庭で吹き抜けだったところに屋根を設けたということで、天井が高い。また、他の図書館と同様、施設としてがスターリング記念図書館の中にあるのだが、ここだけは外気が感じられる。

最後は、

・バイネッキ貴重書・手稿図書館(Beinecke Rare Book and Manuscript Library)
http://www.library.yale.edu/beinecke/

だが、ここは、別途インタビューをしたので、あらためて記事にすることにして、幾つか写真だけ紹介しておこう。

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以上、長い上に雑駁な内容で恐縮だが、東海岸有数の2大学の図書館を訪ねた感想として。両大学でお世話になった方々に感謝。