2010-05-26(Wed): Gov 2.0 Expo参加2日目−ティム・バーナーズ=リーさんとティム・オライリーさんに会えた
2010-05-25(Tue)〜2010-05-27(Thu):
Gov 2.0 Expo
(於・アメリカ/ワシントン)
http://www.gov2expo.com/gov2expo2010
の2日目。経験的に知る限り、欧米ではやるときはやるで会議の開始時間が早い。今日は8:30からPlenaryと称する全体での会議で10数名が1人10分程度の持ち時間で一斉に話していく。トップバッターは、このExpoの主催者であるO'Reilly Media, Inc.のTim O'Reillyさん。
- Government as a Platform for Greatness
- by Tim O'Reilly (O'Reilly Media, Inc.)
内容的には、かねてから主張している「プラットフォームとしての政府」論をそのまま述べただけであったが、やはりライブに勝るものはないのかもしれないと思わされた。これまでに彼の主張には何度も目を通しているのだが、やはり眼前と聞くとなると、さらに強い印象を残すものだ。
その後は怒涛のようスピーチラッシュ。キリのいいところでお昼休みの時間も見越して、議会図書館(Library of Congress)へ。旧知のPeter Youngさん、Mari Nakaharaさんに会い、しばし歓談。
・Asian Reading Room
http://www.loc.gov/rr/asian/
ちなみに、来る9月に、議会図書館における日本コレクションの開始80周年を記念した
2010-09-20(Mon)〜2010-10-16(Sat):
Library’s Japanese Collection Past, Present and Future Subject of Display, Symposium
(於・アメリカ/Library of Congress)
http://www.loc.gov/today/pr/2010/10-102.html
という展示会を予定しているという。ご厚意でその際の展示を検討している資料を見せていただいた。この時期は、
2010-09-07(Tue)〜2010-09-08(Wed):
Gov 2.0 Summit
(於・アメリカ/ワシントン)
http://www.gov2summit.com/gov2010
と、
2010-09-27(Mon)〜2010-09-30(Thu):
Web 2.0 Expo
(於・アメリカ/ニューヨーク)
http://www.web2expo.com/webexny2010/
の間でもあり、ぜひまた来たいところだ。
さて、午後は以下の3セッションを聴講。
- Four Perspectives on data.gov.uk
- by Tim Berners-Lee (World Wide Web Consortium), John L. Sheridan (Information Policy and Services Directorate of the UK’s National Archives), Dominic Campbell (FutureGov), Chris Thorpe (The Guardian)
- Working Transparently at the Bottom of Government
- by Debra Louison Lavoy (Open Text), Michael Edson (Smithsonian Institution)
- An Approach Toward Collective Intelligence
- by Jon Udell (Microsoft), Robert Greenberg (G&H International Services, Inc), Greg Whisenant (CrimeReports.com), John Crowley (Harvard Humanitarian Initiative and STAR-TIDES), Robert Davis (San Jose Police Department)
なんと言っても、やはり最初のFour Perspectives on data.gov.ukが圧巻だった。
全体的な話は同じく参加していた津田大介さんのレポートを参照してほしい。
・「津田大介氏特別寄稿「Gov 2.0 Expo」速報レポート2日目」(BLOGOS、2020-05-28)
http://news.livedoor.com/article/detail/4794802/
イギリスのGov2.0の取り組みは、むしろアメリカ以上に先進的だ。しかし、気がかりなのは、津田さんのレポートでもふれられているが、最近の政権交代による影響だ。今回の政権交代については、むしろ旧政権与党であった労働党への対抗上、保守党がより先進的なマニフェストを掲げたことで、Gov2.0は継承され、むしろ強化される見通しという。
昨年の夏に政権交代を経験し、今後数年以内に再び政権が代わる可能性がありうる日本にとっては、非常に参考になる話だった。しかし、政権交代に影響を受けずにGov2.0の流れを維持・強化するにはどうすればいいのだろうか。この点が気になり、セッションの終了後、ティム・オライリーさんに質問してみた。曰く、やはり与野党いずれに関わらず、政党のマニフェストに盛り込ませることが欠かせない、とのこと。オライリーさんらが現政権与党である保守党にアプローチしたのかどうか、したのであればどのようにしたのか、まではうかがえなかったが、大いに考えさせられる指摘だった。現在の日本では、政権与党である民主党がIT政策については一応積極的であり、最大野党である自由民主党は消極的と考えがちだろう。しかし、Gov2.0を推進していこうとする以上、既成の観念にとらわれることなく、すべての利害関係者に納得してもらい、マニフェストに謳ってもらうよう説得と理解に努めるという課題があるようだ。参議院選挙を控える日本としては、候補者を擁立する政党に対して、Gov2.0に対する見解と施策案を求める活動が必要かもしれない。
・dat.gov.uk
http://data.gov.uk/
ちなみに質問の折に、
・ティム・バーナーズ=リー著、高橋徹訳『Webの創成−World Wide Webはいかにして生まれどこに向かうのか』(毎日コミュニケーションズ、2001年、2520円)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4839902879/arg-22/
を読んだことで、当時、まだまだウェブの仕事をしていこう、と勇気づけられたというエピソードを話し、感謝を述べることができた。ウェブの仕事をしている自分にとって、ティム・バーナーズ=リーはやはり神のような存在であっただけに、お目にかかれ、かつ少しばかりは突っ込んだ議論ができたことは、今回の訪米の大きな意味になったと思う。
・Tim Berners-Lee
http://www.w3.org/People/Berners-Lee/
2番目のWorking Transparently at the Bottom of Governmentは、スミソニアン協会等での言っていれば草の根的なウェブ活用の取り組みに関する事例紹介。興味深くはあったのだが、transparencyに関する話とは言えなかったように思う。
3番目のAn Approach Toward Collective Intelligenceは、Wikiのように共同での編集が可能なOpenStreetMapを使った災害支援の話題が中心だった。もう少し広がりのある話を期待していたのが本音ではあるが、これはこれで非常に参考になった。
・OpenStreetMap
http://www.openstreetmap.org/
このサービスはハイチ大地震やルイジアナ沖の原油流出で大いに活用されているという。現在の活況の前提として、インドネシアの大津波災害の際の経験が生きているのではないかという指摘に、グローバルな発想に基づく取り組みであることを実感した。ちなみに、ハイチ大地震に関する被災状況マップの作成には1000名以上の協力があったという。また、単に伝聞情報を書き込むだけではなく、カメラを搭載した凧を飛ばす、オートバイで現地を縦走するといった手段で実際に観察されたデータを反映する取り組みも行っているとのこと。Wiki風の地図システムをつくって、そこで終わり、後は集合知に任せる、というスタンスではなく、一定のモデレートをしていることが印象的だった。
なお、このOpenStreetMapは、日本でも活用の取り組みが始まっている。
・OpenStreetMap Japan
http://www.openstreetmap.jp/
本日のセッションは以上。
その後、Booth Crwalというスポンサー各社のブースを見て回る時間が設けられていた。イベント仕事が多い身としては、実はこの時間に学ぶことが多かった。出展社の中には、単なる展示だけではなく、ドリンクやフードを提供し、来訪者を招き寄せ、主催者もそれを推奨している。話には聞いていたが、アメリカのビジネスショーの文化を実感できた。そして、主催者側もこの後に行われるレセプションとセッションの間にきちんとBooth Crwalの時間をとっていることも素晴らしい。イベントの実施に経済面で大きく貢献している企業・団体に対する敬意を感じる。
さて、オライリー社のブースでは、なんと総帥たるティム・オライリーさんが
・Daniel Lathrop, Laurel Ruma"Open Government"(Oreilly & Associates Inc、2010年、4356円)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0596804350/arg-22/
を無償で配布し、サインをしてくれている。ミーハーな自分としては即座に行列し、サインをしてもらった上、一緒に写真に収まっていただいた。
・Tim O'Reilly
http://tim.oreilly.com/
さて、この際、オライリーさんにうかがったところでは、"Open Government"はいまのところ日本語訳の予定はないという。確かに日本語に訳したとしても、爆発的に売り上がる本とは言えないだろうが、基本書として日本語でも読めるようにしておきたいものだ。どなたか、翻訳に関心はないだろうか。
以上で2日目が終了。
その後、同じワシントンで開催されていた
2010-05-23(Sun)〜2010-05-26(Wed):
ICWSM 2010 - International AAAI Conference on Weblogs and Social Media
(於・アメリカ/ワシントン)
http://www.icwsm.org/2010/
に参加していたグループと、津田さんらGov2.0 Expoに参加していたグループで合流し、会食。総勢8名で初見同士の方々もいらしたが、大いに盛り上がった。この2つのグループを繋いだことは今回の訪米での一番のグッドジョブかもしれない。