文部科学省、「平成19年度学校法人の財務情報等の公開状況に関する調査」を公開(2008-03-12)
文部科学省が「平成19年度学校法人の財務情報等の公開状況に関する調査」を公開した(2008-03-12)。
・平成19年度学校法人の財務情報等の公開状況に関する調査結果について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/03/08030701.htm
・文部科学省
http://www.mext.go.jp/
この調査は2006年度の終わりから2ヶ月以内に大学が作成した財産目録や貸借対照表、収支計算書、事業報告書や監査報告書といった財務情報を一般公開しているかを調査したもので、ここでいう「一般公開」とは
- インターネットのホームページへの掲載
- 広報誌等の刊行物
としている。
調査対象となっているのは、
の合計668法人。なお、国公立大学は調査対象となっていない。調査には対象となったすべての法人が回答している。この100%という回収率にも驚かされるが、やはり注目すべきは「インターネットのホームページへの掲載」が大幅に伸張していることだろう。今回の調査では以下の結果が明らかになっている。
- 全体:
- 431法人(64.5%)←323法人(48.6%)
- 内訳:
- 大学:376法人(70.9%)←288法人(55.4%)
- 短期大学等:55法人(39.9%)←35法人(24.3%)
※←の左側が今回調査結果、←の右側が前回調査結果
過去4年度の推移をみると、大学や短期大学が財務情報をインターネットで公開することが一般的になりつつあることがわかる。
- 2004年度:24.8%
- 2005年度:35.2%
- 2006年度:48.6%
- 2007年度:64.5%
なお、財務情報のインターネット公開を行っている個々の大学名は、
・平成19年度学校法人の財務情報等の公開状況に関する調査【PDF】
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/03/08030701/001.pdf
にまとめられている。
財務情報のインターネット公開が進むことは喜ばしいが、公開そのものを進めるのと同時に公開の仕方も議論される必要があるだろう。今回の調査で文部科学省は、「財務情報等の一般公開に当たって、財務状況に関する全般的な解説をしているなど何らかの工夫を行っている法人」も調査し、452法人(67.7%)という数値を示している。また、具体的な工夫の事例として、
- 財務状況に関する全般的な解説をしている
- 各科目の平易な説明をしている
- 経年推移の状況が分かる資料となっている
- 財務比率等を用いた財務分析をしている
- グラフや図表を活用するなど見やすい資料となっている
- 設置校毎の財務状況が分かる資料となっている
の6点を挙げ、各項目についても数値を示している。このような情報の中身に関する工夫も重要だが、同時に情報にアクセスしやすくする工夫が心がけられているかにも関心を向ける必要がある。たとえば、公開にあたって工夫をしていると回答した452法人のうち、果たしていくつの法人がPDF形式以外での情報提供を実施しているだろうか。PDF形式での情報提供と併行してhtml形式での情報提供を実施している法人、あるいは数値データをexcel形式で提供している法人はどれくらいあるだろうか。
従来、印刷媒体で刊行されてきた財務情報の元となっている電子ファイルを、ただPDF形式に変換してインターネットに公開しただけでは、情報公開は確かに一歩前進はしているものの、それでは真の情報公開とはいいがたい。公開する以上は見つけやすく、見やすく、使いやすく、といった点にも配慮が必要だ。次回の調査にあたっては、文部科学省にはぜひ情報提供の方式をより踏み込んで調査してほしい。
そして、調査の手法とあわせて、調査結果の発表方法も一工夫してほしい。上記のように、
・平成19年度学校法人の財務情報等の公開状況に関する調査【PDF】
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/03/08030701/001.pdf
には調査対象となった大学の回答状況が記されているが、インターネットで財務情報を提供している法人については、そのURLを明記してリンク集にしてほしい。また、そのリンク集には今回調査対象となっていない国公立大学のデータも加えてほしい。そのようにして、日本の大学の財務状況を一覧できる資料を整えることも、文部科学省の務めではないだろうか。
・「情報公開のあり方−神奈川大学の財務情報公開」(編集日誌、2006-07-28)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20060804/1154625237