2006-02-05(Sun): 友がつなぐ故人の仕事 −『アメリカ人であるとはどういうことか』刊行

アメリカ人であるとはどういうことか ―歴史的自己省察の試み』(マイケル・ウォルツァー著、古茂田宏訳、ミネルヴァ書房、3360円)という翻訳者が刊行された。この本は故・辻内鏡人さんが研究していたもので、今回辻内さんの友人である古茂田宏さんの手で翻訳された。辻内さんをご記憶の方はどれくらいいるだろうか。2000年の12月、自動車による傷害致死事件で亡くなったアメリカ史の研究者である。当時は一橋大学の教員だった。今回の翻訳は、残されたゼミ生が辻内さんの遺志を継いで発案し、それを古茂田さんが請け負ったという。
ごく一瞬ではあったが、故人にお世話になり大いに励まされた者として、翻訳書の刊行を喜びたい。本自体、非常に刺激的なタイトルであり、9・11事件以降のアメリカのあり方を考えるうえで最適なテキストの一つという評判を聞く。一人でも多くの方が手にしてほしい。

・『アメリカ人であるとはどういうことか ―歴史的自己省察の試み』(マイケル・ウォルツァー著、古茂田宏訳、ミネルヴァ書房、3360円)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4623045307/arg-22/
・追悼・辻内鏡人 1954-2000
http://www.ne.jp/asahi/stnakano/welcome/Tsujiuchi.html

2005-07-24(Sun):

ふれるのが遅くなってしまったが、先月末に元文部事務次官・木田宏さんが83歳で亡くなった。個人的には、教育雑誌の編集者をしていたときの執筆者の一人である。だが、なによりも教育委員を公選制から任命制へと変更した地方教育行政法に関与するなど、戦後の教育史の生き証人であっただけに残念な訃報。だが、岐阜女子大学デジタルミュージアムで、木田宏教育資料アーカイブスの構築が進められている。木田さんが故人となったいまは、故人に代わって戦後教育史の断面を語ってくれるよう、このアーカイブスが一日も早く完成することを期待したい。

・木田宏教育資料アーカイブ
http://dac.gijodai.ac.jp/vm/kida/
岐阜女子大学デジタルミュージアム
http://dac.gijodai.ac.jp/

2005-07-21(Thu): 故・菱木昭八朗さんのサイト

菱木スウェーデン法研究所を公開していた菱木昭八郎さん(元・専修大学教員)が2004年5月に亡くなっていたことを知る。現在、菱木さんのサイトは、ご遺族の了解のうえで、専修大学法学部広報委員会が管理しているという。ご遺族と同委員会、そしてなによりも菱木さんのおかげで、いまでも「日本語で読めるスウェーデンの法律」などのスウェーデン法の情報資源が公開されていることは喜ばしい。故人の冥福をお祈りするとともに、サイトを存続させた専修大学法学部広報委員会の見識をたたえたい。さて、故人のサイトの管理継承については非常に関心があるので、専修大学法学部広報委員会の関係者の方がいらっしゃれば、ぜひお知らせいただきたい。よく経緯をうかがいたいと思う。

・菱木昭八朗のホームページ
http://www.isc.senshu-u.ac.jp/~thj0090/

2005-04-18(Mon):

国語教育で知られる大村はまさん死去。大村はまさんといえば、鳴門教育大学附属図書館の大村はま文庫がある。「大村はま文庫」特殊分類表が公開されているほか、OPAC(蔵書検索)で、「所在」の項目に「大村はま文庫」を指定することで蔵書を一覧できる。また教科教育実践学関係資料(国語科)データベースでも同じことができる。サイトづくりという観点からいうと、「大村はま文庫」のページにOPACか、教科教育実践学関係資料(国語科)データベースで、「大村はま文庫」の蔵書をすべて引き出した検索結果にリンクしていれば便利だろう。

大村はま文庫
http://www.lib.naruto-u.ac.jp/shiryo/omura.html
OPAC
http://www.lib.naruto-u.ac.jp/opac/cgi/searchS.cgi
・教科教育実践学関係資料(国語科)データベース
http://awaji.indigo.naruto-u.ac.jp:8080/kyouka/
鳴門教育大学附属図書館
http://www.lib.naruto-u.ac.jp/

2005-04-11(Mon):

弁護士の小松弘さんが亡くなった。交通事故。享年48歳。ご本人のサイトにあるように、「XMLを活用した法律情報システムのあり方を、弁護士の立場から提案する」第一人者だった。情報ネットワーク法学会をきっかけに、まさにご厚誼をいただいた。あまりに残念なニュースだが、いまとなっては小松さんとの出会いに感謝するのみ。

・弁護士 小松弘の法情報サーバー
http://icrouton.as.wakwak.ne.jp/
・法情報と XML (入門編)
http://icrouton.as.wakwak.ne.jp/xml/primer/index.xml

2005-02-25(Fri):

創価大学の中野毅ゼミによる「In Memoriam: Dr Bryan Wilson ブライアン・ウイルソン先生の思い出」をみて、何年も前に次のようなこと書いた記憶がよみがえった。やや長いが引用しよう。

最近、早川庄八氏(日本古代史)という尊敬する歴史学者の死に遭遇しました。その著書を通して一方的に敬意を抱いていた一読者に過ぎない編集子ですが、氏の死にはやはり大きなショックを受けました。しかし、編集子にさらに大きなショックを与えたのは、通常の訃報欄のみという早川氏の逝去に対する新聞の扱い方でした。残念でもあり、また遺憾でもありますが、これが現在の日本における学術研究の位置づけなのでしょう。このような状況のなかにあって、唯一の救いだったのが早川氏がこの春まで在職していた名古屋大学日本史学研究室が、WWW上でいち早く早川氏の逝去を告げたことでしたhttp://www.lit.nagoya-u.ac.jp/~nihonshi/hayakawa.html。WWWの利用に積極的な同研究室の面目躍如の観がありました。この一件を通して、良質なObituary pageの必要性をあらためて感じる秋の日々です。

6年ほど前の本誌009号(1998-10-27、1181部)の編集日誌に書いたものだ(いま読むと、"Obituary"という単語の用法が間違っているように思う)。ふと、気になり、過去の編集日誌から、「In Memoriam: Dr Bryan Wilson ブライアン・ウイルソン先生の思い出」のようなページがないか、探してみた。

2003-10-24(Fri):「追悼 菊地正幸先生」。東京大学地震研究所による。
http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/kikuchi031018.html

2003-03-23(Sun):紹介が遅くなったが、月曜社モーリス・ブランショ追悼を公開している(2003-02-28)。「ここに開かれる追悼ページは一過性のものではなく、追悼することをやめない「場」です」という決意表明が印象的。せめて著者が亡くなったときくらい、出版社はこういう仕事ができなくては駄目だと思う。ブランショの日本での版元のうち、なんらかの反応を示している出版社は他に1社あるが、他の数社は……。
モーリス・ブランショ追悼
http://www.getsuyosha.jp/kikan/blanchot/
月曜社
http://www.getsuyosha.jp/

2003-01-27(Mon):「後藤総一郎先生・追悼記事」。後藤さんの島崎藤村論だったか、夜明け前論だったか、はたまた国学論だったか、学生時代に読んで感動した覚えがあるが、論文名を思い出せない。
・後藤総一郎先生・追悼記事
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~ri03034/

やや異なるが、こういう記事もあった。

2002-12-06(Fri):山口県立大学を足場に活発な発信に取り組んでいた清原万里さんが亡くなったことを知る……。ご冥福をお祈りしたい。清原さんを初めて知った方もいるだろ。ぜひ清原さんが編集・発行していたメールマガジン「Cherry Press」に目を通して欲しい。これまでの貴重な発信が消えてしまうことがなければよいのだが……。同僚の方がバックアップをとったようだが、山口県立大学には清原さんのサイトを永続的に保存する方向で検討して欲しい。それが学部のサーバー管理者として全力を注いできた清原さんへの手向けではないだろうか。
・きよはらくんの個室「それがどうした」
http://www.cis.ypu.jp/~kiyohara/personalweb/
・Cherry Press
http://www.cis.yamaguchi-pu.ac.jp/~kiyohara/personalweb/cherry/cherrymenu.html

幸いサイトはまだ残っている。

ほかに、北海道大学スラブ研究センターが秋野豊氏追悼ページを公開している。
・秋野豊氏追悼ページ
http://src-home.slav.hokudai.ac.jp/akino/akino.html
北海道大学スラブ研究センター
http://src-home.slav.hokudai.ac.jp/

故人を追悼し、その業績をふりかえる仕事がインターネットでどのように展開されていくのか、引き続き関心を寄せていきたい。一つのヒントは、モーリス・ブランショ追悼の公開に際して、月曜社が記した「ここに開かれる追悼ページは一過性のものではなく、追悼することをやめない「場」です」という言葉にあると思う。私は出版業界におそらく辛いほうだろうが、月曜社という出版社とそこで活動する編集者の存在には、かすかな光を感じる。まだ知名度は決して高くないだろうが、読者の方々にはぜひ一度サイトを訪問してほしい。
月曜社
http://www.getsuyosha.jp/

なお、冒頭でふれた中野毅ゼミによる「In Memoriam: Dr Bryan Wilson ブライアン・ウイルソン先生の思い出」は以下のサイトを参照。
・In Memoriam: Dr Bryan Wilson ブライアン・ウイルソン先生の思い出
http://wilson.seesaa.net/
・中野毅ゼミ
http://nakanozemi.fc2web.com/

創価大学の中野毅ゼミ、In Memoriam: Dr Bryan Wilson ブライアン・ウイルソン先生の思い出を公開

創価大学の中野毅ゼミが、In Memoriam: Dr Bryan Wilson ブライアン・ウイルソン先生の思い出を公開した(2005-02-10)。同大学に客員教授として在籍し、昨年亡くなったブライアン・ウイルソンさん(オックスフォード大学名誉教授)を追悼し、故人の略歴、業績、講義録を公開している。

・In Memoriam: Dr Bryan Wilson ブライアン・ウイルソン先生の思い出
http://wilson.seesaa.net/
・中野毅ゼミ
http://nakanozemi.fc2web.com/