2006-10-18(Wed): 企業サイト≒デジタルライブラリーを実感

10月12日(木)の専門図書館協議会特別セミナー「ウェブで広がる図書館サービスの可能性 −Web2.0時代に向けて」の際、建設会社の清水建設のサイト構築についてうかがう機会があった。サイトを見て驚愕する。「清水建設二百年史」と題して、清水建設がこれまで取り扱った物件について、図面や外観図など、実に詳細な情報が提供されている。紹介されている建造物のなかには、すでに取り壊されたものもあると思うと、清水建設のこの発信が唯一その建造物の姿をいまに伝えているのかもしれない。企業には、企業サイトには、デジタルアーカイブとしての可能性が眠っていることを実感させられる。

専門図書館協議会特別セミナー「ウェブで広がる図書館サービスの可能性 −Web2.0時代に向けて」
http://blog.goo.ne.jp/sentokyo/d/20060913
清水建設の歴史
http://www.shimz.co.jp/200th/
清水建設
http://www.shimz.co.jp/

2006-10-19(Thu): 大学職員と大学教員はパートナーか

2006-10-10(Tue)の編集日誌「これが決定版!本当に「強い大学」」で紹介されていた京都大学若手職員による業務改善提案「KUFプロジェクト報告書」を読む。ざっと目を通した程度だが、職員内部にこういった動きがあるのは歓迎すべきことだろう。日本のほとんどの大学では、職員を単なる事務職とみなす体制をとっているが、大学運営においては教員と対等のパートナーであるという体制を整えていってほしいものだ。実際、大学教員の方々は大学職員という存在をどうとらえているのだろうか。しばしば耳にする大学教員の業務負荷の問題も大学職員の位置づけを教員同等に大学を構成するパートナーとして位置づけていくだけでずいぶんと変わってくるのではないだろうか。野球やサッカーにたとえれば、大学教員はグラウンドで活躍する選手や選手を指揮・統率する監督、コーチにあたるのだろう。だが現状ではプレイヤーでありつつ、同時に球団の経営やチームの補強にあたるフロントを兼ねているのではないだろうか。すべてを一手に担うのではなく、大学職員という身近な存在の意義をいま一度見直せないだろうか。
なお、KUFプロジェクトについては、すでに大学職員関係のブログ「大学職員.net」や「俺の職場は大学キャンパス」で言及されている。

・若手事務職員による提言「KUFプロジェクト報告書」(2006-07-28
http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_notice/ippan/060728_1.htm
・「KUFプロジェクト報告書」(京都大学)(大学職員.net、2006-08-01)
http://blog.university-staff.net/archives/2006/0801/0008post_543.html
・「『週刊東洋経済』の大学特集」(俺の職場は大学キャンパス、2006-10-17
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50254452.html

2006-10-20(Fri): 読了『Web2.0のビジネスルール』

Web2.0 BOOK』の著者である小川浩さん、後藤康成さんによる新刊。ビジネス面の話というよりは、Web2.0に関する全般的な手引きであり、開発体制の組み方など、プロダクトマネージャー向けの話が多い。

・『Web2.0のビジネスルール』(小川浩・後藤康成、MVCOM新書、2006年、819円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4839921679/arg-22/
・『Web2.0 BOOK』(小川浩・後藤康成、インプレス、2006年、1890円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4844322265/arg-22/

2006-10-21(Sat): 研究成果公開促進費の使われ方

昨日行われた財政制度等審議会財政制度分科会・歳出合理化部会及び財政構造改革部会合同部会で、科学研究費補助金研究成果公開促進費の使途が問題となったようだ。配布された「文教・科学技術関係説明資料」で研究成果公開促進費の使途に関する問題点が挙げられている。2005年度の交付案件の一部を対象に調査したところ、

「データベース作成」の消耗品費でiPod、シュレッダー、実験器具等、データベースと関連性の薄い品目を購入した事例。
「データベース作成」の謝金申請額の7割を消耗品費へ流用した事例。
「データベース作成」の実績額の63%が消耗品購入に充てられていた事例。

があったという。また、見通しの甘さから在庫過剰になっている学術雑誌の存在や、学術雑誌、データーベースの作成に関する契約の多くが随意契約で結ばれていることなどを明らかにしている。

財政制度等審議会財政制度分科会・歳出合理化部会及び財政構造改革部会合同部会
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/siryou/zaiseic/zaiseic181020.htm

2006-10-22(Sun): 読了『ウェブ2.0は夢か現実か?』

ウェブ2.0は夢か現実か?―テレビ・新聞を呑み込むネットの破壊力 (宝島社新書)
グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)

ベストセラーとなった『グーグル−Google 既存のビジネスを破壊する』の著者・佐々木俊尚さんの新刊『ウェブ2.0は夢か現実か? テレビ・新聞を呑み込むネットの破壊力』(宝島社新書、2006年、756円)を読み終える。内容はこれまで主にIT系のニュースサイトに掲載されてきたものが中心なので、基本的には読んだことがある話題が多い。だが、新書という形で一冊にまとまるとやはり読みやすいことは確かだ。本というメディアにはまだ侮れない力が存在することを実感する。
さて、本書を通読して私自身が最も得たところは、本書末尾で語られている「インターネットの理想を象徴する言葉として、「自律・分散・協調」がある」(249頁)という一節である。最近、そもそもインターネットは何か、ウェブとは何か、ということを語ること、そのために考えることが多くあるのだが、つい「協調」を落としたまま「自律」と「分散」だけを強調していたように思う。置き忘れていたものを見つけることができた、そんな一冊である。

・『ウェブ2.0は夢か現実か? テレビ・新聞を呑み込むネットの破壊力』(佐々木俊尚、宝島社新書、2006年、756円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/479665416X/arg-22/
・『グーグル−Google 既存のビジネスを破壊する』(佐々木俊尚、文春新書、2006年、798円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4166605011/arg-22/

2006-10-23(Mon): 省庁系の研究助成(2)

2006-10-14(Sat)の編集日誌「省庁系の研究助成」で中央省庁系の研究助成情報を教えてほしいとお願いしたところ、幾つかご教示いただいた。複数の情報を総合すると、結論としては省庁系の研究助成は30以上はあるようだ。
総合的な情報としては、総合科学技術会議が競争的研究資金制度のページで情報をまとめているほか、各省庁や関連する独立行政法人が個別に情報を公開している。

・競争的研究資金制度(総合科学技術会議
http://www8.cao.go.jp/cstp/compefund/ichiran.html
総合科学技術会議
http://www8.cao.go.jp/cstp/
文部科学省の競争的資金一覧
http://www.mext.go.jp/a_menu/02_itiran.htm
総務省 - 戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/scope/
消防庁 - 火災予防:競争的研究資金
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/fieldList4_2.html
情報通信研究機構NiCT) - 公募・支援
http://www.nict.go.jp/support/
新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO) - 公募情報
http://www.nedo.go.jp/informations/koubo/

また、各大学や政府資料等普及調査会が情報をまとめている。

北海道大学 - 競争的研究資金の公募一覧(国・政府系関係機関)
http://www.hokudai.ac.jp/sangaku/jyosei/kyousou_sikin.html
・政府資料等普及調査会 - 競争的研究資金制度
http://www.gioss.or.jp/current2/cr040405.htm

2006-10-14(Sat)の編集日誌「省庁系の研究助成」
http://d.hatena.ne.jp/arg/20061016/1160931318

2006-10-24(Tue): 満鉄100年

朝日新聞の記事で知ったが、旧満州国に設けられた南満州鉄道(満鉄)が今年で創立100周年を迎えるという。ウェブ上の資料を探すと、アジア歴史資料センターに多数の資料があるようだ。だが、データが体系的に整理されているわけではないので、資料を楽しめるほどではない。ぜひ、満鉄をテーマに「日露戦争特別展」、「公文書に見る 岩倉使節団」、「公文書に見る 日米交渉」のようなインターネット特別展を開催してほしい。
さて、その過程で「南満洲鉄道株式会社のページ」というすばらしいサイトをみつけたので、メモしておこう。また、満鉄に関する著作が多い小林英夫さんもサイトを公開している。

アジア歴史資料センター
http://www.jacar.go.jp/
・南満洲鉄道株式会社のページ
http://www14.plala.or.jp/HONGO/
・小林英夫研究室
http://www.wiaps.waseda.ac.jp/user/kobayashi/
・『満鉄 −「知の集団」の誕生と死』(小林英夫、吉川弘文館、1996年、1995円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4642074945/arg-22/
・『満鉄調査部 −「元祖シンクタンク」の誕生と崩壊』(小林英夫、平凡社新書、2005年、735円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4582852890/arg-22/
・『満鉄調査部事件の真相 −新発見史料が語る「知の集団」の見果てぬ夢』(小林英夫・福井紳一、小学館、2004年、2940円)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4096260762/arg-22/

2006-10-25(Wed): マルチメディア民族学

師茂樹さんらの花園大学文学部史学科情報歴史学コースと情報歴史学研究会のためのブログ「情報歴史学研究室」のエントリー「マルチメディアによる民族学」(2006-10-24)で知った興味深い資料。

大森康宏編「国立民族学博物館調査報告(Senri Ethnological Reports)」35「マルチメディアによる民族学
http://www.minpaku.ac.jp/publication/ser/35.html

大森康宏「まえがき」
牛島巌「ハイパーメディア民族誌への初歩的な試み −フィリピン・レイテ島北部マリピピ島の陶工と交易商人」
大森康宏「民族誌映画を用いたマルチメディアによる研究発表」
末成道夫「ベトナム民族誌のマルチメディア的形態をさぐる −大森康宏教授「新しい視覚情報開発のための民族誌映画の分析と活用」プロジェクトに参加して」
園田直子「CD-ROMを保存科学に応用する可能性 −「繊維製品の保存マニュアル」を作成して」
舘入慧雨「消え残した江戸文化 −次世代への伝承経路」
波多野宏之「『パリのアート・ライブラリー』の試み」
茂木栄「映像民俗学のこれから −映像資料の電子メディア活用の試み」
森田恒之「文化財の除錆技術 −マルチメディアを利用した保存修復技術のための教科書作成の試み」
山下晋司「文化人類学における視聴覚教育の可能性 −CD-ROM版「『楽園』の創造 ─ バリにおける観光と伝統の再構築」によせて」
山中速人「空間モデルとしてのアフプアアの再現 −3次元グラフィックスによるハワイ先住民の伝統的居住地域空間の再現」
祖父江孝男「放送大学の教育における文化人類学関係の映像が果たす役割」
大森康宏「あとがき」

これは読んでみたい。
ちなみに、マルチメディア民族学としては、湖中真哉さんの取り組みがサイトで公開されている。こちらも必見。

・「マルチメディアによる民族学」(情報歴史学研究室、2006-10-24
http://ihistory.blogspot.com/2006/10/blog-post_116169428100537846.html
・湖中研究室アフリカ民族誌(湖中真哉さん)
http://africa.u-shizuoka-ken.ac.jp/

2006-10-26(Thu): 国際交流基金を訪問

東京・赤坂の国際交流基金を訪れ、ブログ「地球を、開けよう。」の初代スタッフ、二代目スタッフの方々、JFサポーターズクラブのサイト、国際交流基金のサイトの担当者の方々に会う。また、ブログ「地球を、開けよう。」の運営を援けてきた情報センターの部長・次長のお二人にもお目にかかれた。
今回の訪問のきっかけは、10月12日(木)の講演「専門図書館協議会特別セミナー「ウェブで広がる図書館サービスの可能性 −Web2.0時代に向けて」で同基金の方にお目にかかったところにある。ブログの運営メンバーにぜひお目にかかりたい旨を申し上げたところ、面談の機会を設けてくださった。感謝。
赤坂のアーク森ビルにある同基金内、特に情報センター(JFIC)のJFICライブラリーを見学させていただいた後、メンバーの方々と昼食をとりつついろいろとお話をうかがう。国際交流基金について、私はいままで様々な発言を繰り広げてきた。

・新着・新発見リソース「国際交流基金、JFサポーターズクラブ会員専用サイトを公開」(2004-10-02)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20041002/1136272460
・新着・新発見リソース「国際交流基金、ブログ「地球を、開けよう。」を公開」(2005-09-18
http://d.hatena.ne.jp/arg/20050918/1134798513
・2005-12-17(Sat)の編集日誌(情報リソースセンター構想への意見)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20051218/1134832835#c
・新着・新発見リソース「国際交流基金、平成17(2005)年度日本語版メールマガジンアンケート調査結果を公開」(2006-04-02
http://d.hatena.ne.jp/arg/20060402/1143942858
・新着・新発見リソース「国際交流基金、「地球を、開けよう。」ブログの運営チームを発足」(2006-10-08
http://d.hatena.ne.jp/arg/20061008/1160246573

当時や現在の担当者の方々にお目にかかり、これらの発言に丹念に目を通し、同基金としてできること、できないことを真剣に考えてきたことをあらためて実感させられた次第。
懇談の場でも担当者の方々にお伝えしたのだが、国際交流基金のウェブでの活動は広く共有していきたい貴重な経験だ。試行錯誤のなかで生み出してきた様々な成功や失敗の体験は他の機関や個人に大いに参考になるだろう。11月25日(土)から11月27日(月)にかけて東京都の国際研究交流大学村で行われるサイエンスアゴラ2006「科学と社会をつなぐ広場をつくる」で、私も「研究のより良いウェブ情報発信に向けて」(仮称)と題したワークショップを持つことになっている。開催日時は11月26日(日)で、場所は東京国際交流館。この場では様々な組織や個人がウェブで発信する際に直面してきた課題と課題を乗り越えるための知恵について幅広く経験の共有を図りたいと考えている。国際交流基金の事例はその最たる例の一つだろう。

・ブログ「地球を、開けよう。
http://d.hatena.ne.jp/japanfoundation/
・JFサポーターズクラブ
http://www.jfsc.jp/
国際交流基金
http://www.jpf.go.jp/
2006-10-12(Thu)の編集日誌「専門図書館協議会特別セミナー「ウェブで広がる図書館サービスの可能性 −Web2.0時代に向けて」」
http://d.hatena.ne.jp/arg/20061016/1160931320
・情報センター(JFIC)
http://www.jpf.go.jp/j/jfic/
・JFICライブラリー
http://www.jpf.go.jp/j/jfic/lib/
サイエンスアゴラ2006「科学と社会をつなぐ広場をつくる」
http://www.scienceagora.jp/
・ワークショップ「研究のより良いウェブ情報発信に向けて」(仮称)
http://www.scienceagora.jp/program/p26/f24.htm

2006-10-27(Fri): ThinkQuest@JAPAN2007、申し込み始まる

事務局であるNPO法人学校インターネット教育推進協会より、情報掲載の依頼をいただく。

主に小中高生を対象にしたウェブサイトコンテストであるThinkQuestが、従来の「全日本Web教材開発コンテスト」から、「全日本中学高校Webコンテスト」へと衣替えされて始まるそうだ。現在中学生の部と高校生の部の参加チームを募集している。生徒にとっては非常に良い経験になると思うので、ぜひ中学・高校の教員の方々には参加を検討してほしい。参加申し込みの締め切りは2006年11月14日、作品提出の締め切りは2007年2月14日。
ところで、ThinkQuestは1998年の開始以来、すでに8年の歴史がある。過去の入賞者のなかには成人し、ウェブ業界で活躍している方がいるかもしれない。追跡調査を行い、過去の参加者のその後を示すと、コンテストも盛り上がるのではないだろうか。

・第9回全日本中学高校Webコンテスト(ThinkQuest@JAPAN2007)
http://www.thinkquest.jp/